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Vocab Sheet 英単語シートVocab Sheet


Vocab Sheet

 

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 中高一貫コース1周目のとき、教え子のO君が授業後にやってきて、
 「先生、英検『準2』級レベルの単語集、余りがあればいただけませんか」
 と言ったことがありました。
 当時の指導学年は高校3年生で、難関大学を目指すため、2級レベルの英単語集を生徒に与え小テストしていました。しかし、彼は2級が難しすぎる、と準2級から取り組みたい、という訳です。
 その学年は私が中3から持ち上がった学年で、これにヒントを得て、ある『試み』をしました。
 生徒に英語で『曜日』『月』『色』を書かせてみたのです。
 結果、私は驚きました。Thursdayが書けない、Novemberを間違える…。そういった答案が散見されたのです。
 授業内小テストではcontradictory / controversial / breathtaking…とやっているのに、これでは本末転倒だろう、と思いました。
 準2級までの語彙から固めたO君は、見事難関の九州大学に現役合格しました。
 これらの経験が、以下に記す『英単語シート』の作成の契機となりました。

 私は巷に出回る、英単語集を生徒に買わせていません。独自作成の『英単語シート』というものを6か年(中高一貫校)使っています。

 『英単語シート』とは、複数の英検の単語集から英単語・熟語をエクセルに
リストアップし、重複語を除き、英検5・4・3・準2・2級のレベル順に単語・熟語
をワードで並べたものです。


 現在私が使用している自作『英単語シート』はB5用紙で40単語×104ページ構成です。英検の傾向は未来永劫変わらないとは限らないので、また私自身の研鑽のためにも、私は中高一貫6か年が一周するごとにシートを作成し直します。
 シートの配布は学年進行に合わせて進めます。下記は配布例です(中高一貫校)。

 
≪配布例≫
中学1年生1学期はじめ 5級単語・熟語
中学1年生・夏休み前 4級単語・熟語
中学1年生・冬休み前 3級単語
中学2年生・春休み前 3級熟語・動詞と形容詞の活用表
中学2年生・夏休み前 準2級単語の2/3
中学2年生・冬休み前 準2級単語の1/3
中学3年生・春休み前 準2級熟語
中学3年生・夏休み前 2級単語の2/3
中学3年生・冬休み前 2級単語の1/3
中学3年生・春休み前 2級熟語


 長期休暇前に配布して、新学期はじめに範囲の英単語コンテストを行っています。
 ある調査によると、人の記憶は8歳を過ぎると下降の一途だと読みました。6か年のうち、記憶力に長ける低年齢時に、英検2級までの語彙の配付・通しテストを一気に完了させます。残る高校3か年で小テストの徹底反復、output率を90%以上にまでもっていきます。
 小テストは、さまざまな様式があると思いますが、私の場合、単位数の多い方の英語の授業で実施、私が読み上げた語の英語と日本語を書いて、交換採点、4/5点で合格、不合格は裏に間違えた語の日本語1回・英語20回書いて提出、このペナルティの提出がなければ次回小テストに参加させない、小テスト後に次回小テストページの音読練習(教師の音読にリピート)で次回小テストに備える、という形で行っています。5回連続不合格者は、英単語シート5ページ分範囲・4/5点合格・合格するまで再テスト、を課しています。
 英単語(熟語)は、英語の4技能『読む』『書く』『聞く』『話す』の礎であり、習得に力を入れなければならない項目です。『1分間英語勉強法』の著者、石井貴士先生が仰っているように、リーディングの最中にわからない語に 頻繁に出くわし、読みが滞るストレスをもたせないために、単語習得はリー ディングから独立した学習を、また原則1単語1定義で学習初期に徹底して数を課すべきだと思います。
 小テストは、学年の英検の取得状況でページを設定します。たとえば、中学2年、第1回英検終了時で英検準2級取得者が学年の20%、3級取得者が75%であった場合、小テストの開始地点は『3級英単語(熟語)』ページです。英検は記号問題、6割点程度で合格のため、3級取得が大多数に上ってもしばらくは取得中心級に合わせます。
 灘高校・木村達哉先生が語彙指導で仰るように、クイックレスポンスができて初めてその単語の『習得』と言えると思います。漫然とならないように、高校の小テストは読み上げの速度を上げていきます。
 また、O君の例に学び、易レベルの語彙の取りこぼしがないように、と長期休暇補習においては英検5級からの全シート範囲の小テストを広範囲→小範囲で設定して行います。下記は小テスト範囲例です。


≪小テスト範囲例 : 高校1年生・夏期補習・20日の場合≫
@20日を2分し、10日を英単語テスト・10日を英文法テストに
A英単語シート104ページ÷55≒1.89(基準値)
(55は、1+2+・・・10の等差数列の和)
B英単語試験最終日は基準値×1のページ数、その前の回は基準値×2のページ数…という具合に小テスト範囲数を算出

Day1 英単語シートNo.1〜19(4/5点合格・合格するまで再テスト・以下同じ)
Day2 英文法テスト@(私は年度により、『Forest 解いてトレーニング(桐原書店)』や『Breakthrough Workbook(美誠社)』を使用しています)
Day3 英単語シートNo.20〜36 (1.89×9≒17ページ)
Day4 英文法テストA
Day5 英単語シートNo.37〜51 (1.89×8≒15ページ)
Day6 英文法テストB
Day7 英単語シートNo.52〜64 (1.89×7≒13ページ)
Day8 英文法テストC
Day9 英単語シートNo.65〜75 (1.89×6≒11ページ)
Day10 英文法テストD
Day11 英単語シートNo.76〜84 (1.89×5≒9ページ)
Day12 英文法テストE
Day13 英単語シートNo.85〜92 (1.89×4≒8ページ)
Day14 英文法テストF
Day15 英単語シートNo.93〜98 (1.89×3≒6ページ)
Day16 英文法テストG
Day17 英単語シートNo.99〜102 (1.89×2≒4ページ)
Day18 英文法テストH
Day19 英単語シートNo.103〜104 (1.89×1≒2ページ)
Day20 英文法テストI


 次に挙げる資料は、高2・上記テストを課した夏期補習直後に行った、センター英語演習(ハーフ・得点を倍)の結果です。生徒は中高一貫ではなく、高校入学組、高1までに単語シートを配布完了しました。
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 シートの前半は5〜3級レベルなので、範囲を広く設定できます。英単語シート後半に進むにつれて配付から日の浅い、また難しい語が増えるので範囲を次第に狭くしていきます。
 長期休暇補習が年に3回、3級英単語を中学1年生の冬休みに配布したと仮定すると、3級単語のテストが中高6か年で都合15回はできる計算になります。これに日々の小テストが加わり、また6か年の全40回ほどを数える定期テスト・実力テスト前に見直すことを経て、英検初級レベルの語彙習得は盤石になります。

 まとめると、英単語シートの長所は、
@ 通常数冊購入に及ぶ、単語(熟語)本に要する費用が要らない
A これ一冊あれば、6か年にわたり習熟度学習、すなわち生徒が自身のレベル(英検級)に応じた自学ができる(準1級志望者除く)
B 1ページでたくさんの語彙を一度に見ることができる(私の場合、40単語)
C 小テストの指示が簡明・合理的(次回「No.○」・主要英検取得級に合わせて設定)
D 定期テストの設定が容易・合理的(試験範囲No.○〜○・主要英検取得級に合わせて設定)
E これ一冊あれば、長期休暇補習・小テスト等で、易レベルの語も繰り返し復習が図れる。
F 自作なので、教師のオリジナル作品ができる(不要と考えられる語の削除、その他編集、修学旅行写真を添える、無地のB5ルーズリーフ紙に印刷し製本、アクセントの文字のフォントを変える…)
G 携行に便利(現行のものは両面印刷でB5が52枚・とても軽い)
H 高校で考査範囲に『英単語シート全範囲から』とした場合、先々の定期考査の語彙セクションを作りだめできる。
I 定期考査出題前に、外部模試等で生徒に見られるミススペルの語を洗い出し、定期設問に加えることができる(シートはデータなので、Ctrl+Fの検索ですぐに発見できる)
J 物持ちの良い生徒は6か年使っていくので、愛着がわく(卒業生で英単語シートを使用し続ける教え子もいます!)

 短所は、
@ 音声CDをつけることができない
A 紛失・破損に対して、非売品であるので、コピーの備えが要る
 ことでしょうか。  とはいえ、@に関しては、授業内の音読リピート練習でカバーができます。Aに関しては、年間で4〜5人、替えを取りに来るくらいです。

 人の長期記憶に語彙を落とす徹底研究の末編み出したシステムです。英単語シート作成以後、3級レベルまでの英単語のoutput率がほぼ100%になりました。
 英単語シートシステム、是非お試しください。



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